保健師ってどんな仕事?と聞かれたら、ちょっと答えに困るかもしれませんね。
保健師は人気の職業で、目指す人も増えています。
保健師の仕事内容がどんなもので、どうしたらなれるのかを解説します。
目次(もくじ)
保健師の仕事とは?
保健師になるには看護師の資格が必要で、保健師も看護師と同じ、人の健康に関わる仕事です。
しかし保健師と看護師では、働き方も仕事内容も大きな違いがあります。その違いとはどのようなものでしょうか?
保健師の仕事は「治療」ではなく「予防」
看護師の仕事は、医師の指示のもとに患者を「治療」することです。
それに対して保健師の主な仕事は、病人をできるだけ減らす「予防」です。
予防には、病気の発生を未然に防ぐ「第一次予防」と、病気を早期発見する「第二次予防」があり、保健師はそのどちらにも関わります。
第一次予防に属する保健師の仕事は、生活習慣病にならないための食事指導、インフルエンザなどが流行したときの注意喚起、性感染症にならないための予防知識の普及などです。
第二次予防に属する保健師の仕事には、所属する地域や会社での健康診断、がん検診などを計画・実施することなどがあります。
最近は企業に所属する保健師も多く、従業員のメンタルヘルス(精神面での健康)へのサポートも重要性を増しています。
保健師に必要な素質は?
保健師の仕事は、夜中でも対応が必要というような緊急性はありませんが、担当する人々の健康を守るために何が必要かを考える、広い視野と計画性が要求されます。
急な病変に対応する能力よりも、今後起こりうる事態を予見して、その対策を練っていく能力が大切になります。
いわば病院に行く人をできるだけ減らし、元気で長生きする人を増やすのが、保健師の仕事と言えます。
保健師は仕事柄、土・日・祝日は休みで、夜勤がなく残業も少ないという働きやすさがあります。
保健師はどこで働くの?
保健師の職場は大きく分けると、「地方自治体の保健所や保健センター」・「企業」・「学校」・「病院」の4つです。
それぞれの職場での仕事には、どのような特徴があるのでしょうか?
保健所・保健センターに勤務する「行政保健師」
県や市町村が管轄する保健所や保健センターで働くのが「行政保健師」です。
行政保健師は、公務員であり保健師でもあるということになります。
全国には約6万人の保健師がいて、その内の約7割が行政保健師です。
行政保健師の仕事は、赤ちゃんから高齢者まで、地域のあらゆる年齢層の健康をサポートすることです。
とくに妊産婦、高齢者、身体障害者など、サポートが必要なことが多い人々に関わる仕事が中心になります。
具体的には、育児相談、無料健康診断の計画や実施、子どもの虐待防止など、幅広い仕事があります。
保健所に所属する医師や栄養士など、他の医療関係者と協力しながら業務を行ないます。
企業に勤務する「産業保健師 」
企業に所属して、社員の健康をケアするのが「産業保健師」です。
会社の社員であり、かつ保健師でもあるという立場です。保健師全体の1割弱が産業保健師として働いています。
産業保健師は、社員の健康診断の計画・実施を行なう他、近年は社員のメンタルケアに関わることが多くなっています。
この背景には、会社員の過労死や、過重労働によるうつ病の発症などが社会問題になっていることがあります。
2015年からは従業員が50人以上いる会社では、年に1回、社員の「ストレスチェック」を行なうことが義務付けられました。
<出典>:ストレスチェック制度関係 Q&A(目次) /厚生労働省
産業保健師がいる企業では、このストレスチェックも保健師の仕事になります。
学校に勤務する「学校保健師」
小・中・高校の「保健室の先生」が学校保健師で、正式名称は「養護教諭」といいます。
保健室の先生は、養護教諭免許をもつ保健師で、公立学校の場合は公務員でもあるということになります。
私立の学校では、養護教諭免許がない保健師でも保健室の先生になることは可能です。
また短大や大学では看護師免許だけでも保健室勤務ができます。
学校保健師の仕事は、学校内での軽いけがの手当てをする他、「病院に行く必要があるかどうかの判断」も任されます。
定期検診の手配や校内の衛生管理も学校保健師の仕事です。思春期の生徒のメンタルケアや性教育なども行ないます。
<関連記事>:学校保健師の仕事内容は?
病院に勤務する「病院保健師 」
病院保健師は病院に所属して、院内感染の予防などの仕事をします。
「健康診断センター」がある病院では、そこで働くことになります。
看護師といっしょに働く職場なので、人手が足りないときには、看護師の仕事を手伝う場合もあるのが他の保険師と違う点です。
患者の自宅を訪ねて健康指導をする「訪問看護」も病院保健師の仕事の1つです。
保健師になるために必要な資格は?
保健師なるために必要な資格や、その取得方法について見ていきましょう。
看護師資格と保健師資格が必要
保健師になるためには、看護師免許と保健師免許の両方が必要です。
学校保健師になるには、この2つの他に養護教諭免許も必要です。
この3つの資格を1つずつ取っていく方法もありますが、実際は1つの教育機関で同時取得を目指すのが一般的です。
看護師免許と保健師免許は国家試験に合格することで与えられますが、養護教諭免許には国家試験はなく、大学等で必要な単位を取れば取得できます。
行政保健師または産業保健師を目指す場合
行政保健師または産業保健師になるには、「保健師指定養成校」の認可を受けた「看護大学」(看護学科のある大学医学部も含む)で4年間学び、卒業と同時に看護師国家試験と保健師国家試験を受験します。
看護師資格を取って、看護師としての実務経験を積んだ後に保健師の資格を取る場合もありますが、実際はまれ(7%程度)で、最初から保健師を目指す人が大多数です。
看護師資格のある人が保健師になるには、1年制の「保健師養成学校」に入学するか、看護大学に編入するかして、保健師国家試験の受験資格を得ます。
「看護大学」は全国に、国立37校、公立45校、私立218校の合計340行があります。
これに対して「保険師養成学校」は非常に少なく、全国に10校ほどしかありません。
学校保健師を目指す場合
学校保健師になるには、看護師資格と保健師資格の他に、養護教諭資格が必要です。
最初から学校保健師を目指す場合は、看護大学で学ぶときに養護教諭免許に必要な単位を履修します。
いったん看護師あるいは保険師になった人が、学校保健師(養護教諭)を目指す場合は、養護教員養成施設で半年以上学んで、必要な単位を取ります。
保健師として就職するためには?
実際に保健師として働くためには、資格を持っている他に「採用試験に受かる」ことが必要です。
保健師の採用試験とはどんなもので、どれくらいの倍率があるのでしょうか?
国家試験は合格率が高いが、採用試験は難関
保健師の国家試験は、受験者のほとんどが合格する珍しい国家試験で、平成26年度はなんと99.4%が合格しています。
保健師国家試験の受験資格さえあれば合格する、といっても過言ではありません。
つまりこの試験は、必要な単位を取ったことを最終確認するという意味が大きいのです。
これに対して保健師の就職試験は、ときには数十倍の競争率になる「狭き門」です。
保健師免許があっても就職できない人が、大勢います。
<関連記事>:保健師の転職、検診センターで働きたい!
保健師の仕事に人気がある理由
保健師ほとんどは、公務員か企業保険師を置くような大企業の社員なので、非常に安定した職業であることが、人気の理由の1つです。
看護師のようなシフト勤務ではなく夜勤がないこと、土・日・祝日は暦通りに休めること、有給休暇や産休、育休が取りやすいことも、人気の理由です。
また、職場内での同僚との競争もなく、一般の職員にはない特殊な知識があることで、一目置かれる存在だということもあると思われます。
保健師の種類によって異なる採用試験
行政保健師、産業保険師、企業保健師、学校保健師は、それぞれ採用試験が異なります。
・行政保健師
公務員なので、都道府県や市町村ごとに実施している「公務員採用試験」に合格しなければいけません。
この試験は、何点以上取れば合格するという試験ではなく、面接も行って、必要な人数だけ合格させる試験です。
定員が一般公務員より少ないので、かなりの難関になります。
倍率は自治体によって異なりますが、一般に人口の少ない地方よりも、都会の方が合格しやすいと言われています。
・産業保険師
大企業の社員で給与も高いことから、保健師の中でも最も狭き門になっています。
試験はもちろん企業が行う採用試験で、社員のメンタルヘルスに関わる仕事なので面接が重視される傾向があります。
・学校保険師
公立学校では、市町村が実施する「教員採用試験」があります。
養護教員は学校に1人なので、行政保健師と同じでポストは一般教員より少なく、高い倍率があります。
・病院保険師
採用する病院によって採用人数に違いがありますが、やはり看護師よりも定員は少ないので、ある程度狭き門であることに変わりはありません。
やりがいがあって、働きやすいと言われる、保健師の仕事について解説しました。
就職は中々の難関ですが、チャレンジのし甲斐はありそうですね。
- 保健師は医療の分野でも主に「予防」の仕事に携わる
- 保健師になるには、看護師免許と保健師免許の2つが必要
- 学校保健師になるには養護教諭免許も必要
- 行政保健師になるには、公務員試験をパスする必要がある
- 保健師は、安定した職業のうえに、定時勤務で働きやすいので、就職は倍率が高い