看護師や保健師など、医療系の資格を生かせる場は病院だけでなく、色んな施設で働ける可能性があります。
そのひとつが、小学校や中学校、高校、大学、短大、専門学校といった、教育施設の保健室です。
保健室勤務の応募資格として、養護教諭だけでなく保健師も対象となるケースがあります。
いわゆる「保健室の先生」になるには、どのような資格が必要になるのでしょうか?仕事内容や待遇面についても見ていきましょう。
目次(もくじ)
学校保健師と養護教諭の違いは?
保健室の先生になりたいとき、養護教諭になる以外に、学校保健師になるというルートがあります。
学校保健師と養護教諭には、それぞれ共通する面と異なる面とがあり、大きな違いは、「必要とされる資格」と「働ける場所」です。
養護教諭とは?
養護教諭になるには、1.養護教諭の免許状を取得し、2.教員採用試験に合格する必要があります。
まず養護教諭の免許状を取得するには、養護教諭養成課程を設置する大学、短大へと進学し、所定の単位を修得します。
保健師の免許状には、履修した施設によって第一種、第二種、第三種とありますが、免許状の種類が違っても、出来る業務や仕事の内容に差はありません。
教員採用試験は、各都道府県の教育委員会によって行われます。
これに合格すると公立学校の保健室で正規採用として勤務することができ、私立学校の場合には、各学校実施の試験を改めて受けることとなります。
このように養護教諭は、保健師の資格がない方でもなれますし、保健師になった後に養護教諭を目指すことも可能です。
ちなみに「養護学校教諭」は、障害を抱える児童のための学校の先生を指し、養護教諭とは異なります。
学校名称が「特別支援学校」と統一されたのを機に、養護学校教諭は「特別支援学校教諭」へと名称変更されています。
学校保健師とは?
学校保健師は、養護教諭の資格を持たずに教育施設の保健室に勤務する保健師です。
養護教諭は公立学校、私立学校いずれも勤務可能なのに対し、学校保健師は私立系の教育施設でのみ勤務することが出来ます。
その理由は、公立学校では養護教諭の設置が義務付けられているのに対し、私立の場合には養護教諭の設置義務がないからです。
このため養護教諭の資格を持っていなくても、保健師として学んだスキルや知識を、学校全体の健康管理に生かして働くことができます。
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学校保健師と養護教諭、何が違うの?
学校保健師であっても養護教諭であっても、生徒や教師達の健康を管理するという業務内容は変わりません。
待遇は学校によりますが、学校のない週末や祝日が休日となり、決まった勤務時間内で働けることがほとんどです。
年収では、保健師の場合幅が広く、平均で約530万円と言われています。
一方、地方公務員である養護教諭はボーナスや昇給が安定しており、平均年収は620万円まで跳ね上がります。
つまり、保健師資格だけの学校保健師よりも、公務員である養護教諭として働く方が、将来的により高い収入を期待できると考えてよいでしょう。
保健室の先生は、勤続する方が多いために補充の機会が少なめで、採用の倍率は高くなります。
その点からも、養護教諭の資格は有力なアピールポイントになると見られます。
保健師資格を取得して、医療機関や行政機関で働いた後に、改めて養護教諭の免許を取得し、教員採用試験を受けて学校保健師になるという道もあります。
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学校保健師の仕事内容は?
学校保健師は、1つの施設につき1人ということがほとんどです。ただし、学校全体の健康管理を担う業務量は、決して少ないものではありません。
具体的にどのような仕事をするのか、大きく4つの役割に分けて見ていきます。
学生や教職員の健康管理
学校保健師のメインとなる仕事は、保健室の先生として、学校に在籍する生徒や教師、事務スタッフらの健康を管理することです。
ケガや体調不良で保健室を訪れる生徒の応対をし、必要な処置を行います。
すぐに病院に行く必要がある際には、担任や保護者に連絡の上、付き添うこともあります。
また、免疫力がまだ十分でない子供たちは、急に体調が悪化しがちです。
インフルエンザなどの感染症が急激に広まることがあり、その場合は学校保健師が中心となって対応します。
心身の健康に関するカウンセリングも、学校保健師の大切な仕事です。
なかでも校内のいじめについては、社会問題として注目が高まっています。
文部科学省では「養護教諭は、児童生徒の身体的不調の背景に、いじめなどの心の健康問題が関わっていること等のサインにいち早く気付くことのできる立場にあり、養護教諭のヘルスカウンセリングが一層重要な役割を持ってきている」としています。
いじめの悩みで教室に入ることができず、保健室で過ごす生徒もいます。
こうした生徒達の気持ちに寄り添い、彼らの学校生活をサポートするのも学校保健師の仕事です。
これらは単純な問題ではないため、専門のカウンセラーと連携し、業務にあたることもあります。
高校~大学といった大人になる前の多感な時期には、対応が難しい相談や問題に直面することもあります。
また、生徒を指導する立場の先生が、問題を抱えケアを必要とすることもあることを覚えておきましょう。
また生徒の中には、持病のために運動などの活動が制限される児童もいます。
担当教員と協力して健康状態を把握するとともに、周囲の子供達の理解を求め、安心して学校生活を送れるように見守ります。
現代では、特定の食べ物などにアレルギーを持つ生徒は少なくなく、万が一発作を起こした際には迅速な対応が求められます。
命にかかわる問題であり、学校保健師はその責任を十分に認識しなければなりません。
保健指導
生徒や児童に対して、病気やけがの予防、健康意識の啓蒙といった保健指導を行います。
必要な時期に合わせて、歯磨きや手洗い、うがいなど、生活習慣の中での健康管理を呼びかけます。
そこで、全校集会で話をしたり、担任と協力しホームルームなどで直接指導を行ったり、掲示物を作成したり、お便りを配布します。
性教育について、担任や他の教員とチームを組みながら授業することもあります。
定期健康診断のサポート、校内の衛生管理
定期的に行う健康診断や身体測定の計画、準備、運営をし、生徒たちの健康・発育状況をまとめます。
学校によっては、食事や睡眠、起床時間、歯磨きのなど家庭での習慣について調査を行い、結果に応じた指導を行う場合もあります。
加えて、校内が衛生的に保たれているか、日々チェックし、必要な対応をするのも学校保健師の仕事です。
水質検査や空気検査を行ったり、教室が健康的に過ごせる状態かどうかを確認します。
また、感染症が蔓延しにくいような環境が整うように努めます。
学校保健師は、ほとんどの場合一人で仕事をこなすため、休憩や休暇をとれなかったり、なかなか苦労を理解してもらえない辛さがあるかもしれません。
その反面、日々の学校生活の積み重ねの中で、生徒や教師から感謝されたり、楽しい思い出がたくさんできるのは、学校保健師の大きなメリットと言えます。
- 学校保健師は、私立学校でのみ勤務可能
- 仕事内容は同じだが、養護教諭の方が年収が高い傾向がある
- 保健師になってから養護教諭の資格をとることも出来る
- ケガや病気の対応の他、いじめなどのカウンセリングを担う
- 健康診断の運営や保健指導、衛生管理を行う
- 孤独で業務量は多めだが、生徒や教師との交流がやりがいに