保健師として働く方の約7割が行政保健師であり、そのほか職場の種類によって、学校保健師や産業保健師、そして病院保健師に分けられます。
同じ保健師でもこういった職場の違いによって、勤務時間や勤務体制、残業時間などに大きな違いが見られます。
自分のライフスタイルに合わせた働き方をするには、どんな職場を選ぶかが重要になります。
ここでは、それぞれの職場にどのような傾向があり、転職先の選択にどう関係してくるのか、参考になる情報を紹介します。
目次(もくじ)
残業や夜勤のある保健師の仕事は?
残業や夜勤は手当があり、収入がアップするため、残業や夜勤があるところに転職したいという方もいることでしょう。
逆に、極力避けたいという方もいます。残業や夜勤が多いのは、どの保健師でしょうか?
その1.病院勤務の保健師
病院保健師は、病院やクリニックで働く保健師です。
院内感染の予防や健康診断のサポート、患者さんへの健康指導などを行います。
保健師の仕事としては残業が発生することは少ないものの、保健師は看護師の資格を持っているので、人手が足りない場合は、看護業務を手伝うこともあります。
また施設によって、保健師としての採用であっても、看護師の業務を兼ねるところがあります。
その場合、看護師同様に2交替制や3交替制のシフトに入ったり、夜勤をこなす可能性があります。
施設の規模や方針によるため、採用時に看護業務をどのぐらい兼ねるのか、残業や夜勤があるのかどうか、事前の確認しておく必要があります。
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その2.介護施設や老人ホーム勤務の保健師
保健師が介護施設や老人ホームといった福祉施設に勤務する場合、他のスタッフ同様に、施設利用者の介助に当たります。
入居型や宿泊を伴う施設では、保健師の勤務時間もシフト制など不規則な場合があり、夜勤もあります。
看護業務を行える保健師は、医療資格を持たないスタッフよりもカバーする仕事が多くなります。
そのため、利用者が多い時や緊急対応があるときには、残業を覚悟しなければなりません。
病院保健師の場合と同じく、土日休みのような決まった休みをとることは難しいでしょう。
その3.産業保健師
産業保健師はどちらかというと「日勤の定時で帰れる職場」というイメージがあるのではないでしょうか。
しかし実際には、企業によって勤務時間、残業時間が異なるため注意が必要です。
産業保健師はその会社の従業員として働くため、勤務期間は会社で定められた通りとなります。
残業時間は企業によりけりで、残業がほとんどないところもあれば、毎日3~4時間残業があるというところもあります。
残業が多くなりやすいのは、2,000人以上など多数の従業員の健康管理を、一人の産業保健師が担当するケースです。
いつもはほとんど残業がなくても、集団健康診断の前など、特定の時期だけ残業が続く、ということもあります。
近年、長時間労働による過労、サラリーマンのメンタルヘルスが社会問題として取り上げられることが多くなっています。
産業保健師の役割、重要性がより高まると考えられ、業務量の増加につながることがあるかもしれません。
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残業時間がほぼ無い保健師の仕事は?
育児中や介護中の方など、残業があると困るという方もいます。
次は、残業時間がほとんどない職場の種類、特徴について紹介します。
行政保健師
行政保健師は、都道府県や市区町村の職員、つまり公務員として、保健所や保健センターに勤務します。
8~17時といった勤務時間で、カレンダー通りの土日祝日休みで働くことができ、残業はあったとしても少なめです。
ただし中には、当然のように毎日サービス残業を行う過酷な職場も見られます。
行政保健師が自分で配属先を選ぶことはできませんが、どの施設もすべて残業がないわけではないことを覚えておいてください。
また行政保健師になるには、保健師資格に加えて公務員採用試験に合格する必要があります。
試験には年齢制限が設けられる場合が多く、転職先として誰もが検討可能なわけではありません。
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学校保健師
残業のない職場を目指すとき、最もおすすめなのが学校保健師です。
幼稚園や小学校から大学まで、各種教育施設の保健室が勤務先となります。
私立の施設では、保健師や看護師の資格があれば就業可能ですが、公立の学校に勤めるには、養護教諭の採用試験に合格する必要があります。
生徒や教師らスタッフの健康管理を担当する学校保健師の勤務時間は、学校の始業から終業までであり、休日はカレンダー通りです。
ひとつの施設に保健師は一人なので、業務量は多くなりますが、よほどの事情や緊急事態でなければ、残業が多くなることはありません。
保健師、自分に合った働き方は?
何を優先して職場を選ぶのかは、保健師個人のライフスタイルや環境によって色々です。
そこで、収入を重視した場合や、仕事の続けやすさを重視した場合にはどの職場を選ぶといいのか、傾向をまとめます。
お給料で選ぶなら?
お給料重視の転職でおすすめなのは、産業保健師です。
平均年収は500~600万円と保健師全体の平均とさほど差はないものの、大企業に長く勤務すれば年収800万円以上を得ることも可能です。
逆に年収400万円程度という求人もあり、就業先による差が大きくなっています。
また、産業保健師にはサービス残業がほとんどなく、残業代がしっかり支払われます。
そのため残業の多い大企業の保健師では、その分の収入アップを期待できます。
養護教諭免許を取得し、公務員として働く学校保健師では、安定した収入が期待できます。
転職直後は、平均で年収500万円前後ですが、公務員なので昇給やボーナスが充実する傾向があります。
それ以外の職場では、給与平均の高い順に、夜勤ありの病院保健師、介護福祉施設の保健師、行政保健師となっています。
行政保健師は勤務地による差が大きく、地方ほど給与は低く抑えられる傾向です。
長く続けるなら?
女性の保健師が長く続けられる職場を選ぶ際には、出産や育児を経ても続けやすいかどうかが重要なポイントになります。
この点では、行政保健師、学校保健師が好条件です。
公的施設や教育施設への勤務であるために、産休や育休の制度が充実しています。
休職中には臨時の職員が補充されるので、休暇中の他スタッフへの業務負担を心配する必要がありません。
実際、行政保健師や学校保健師では、育休後に同じ職場へ復帰し、長く勤める方が多く見られます。
高収入が望める産業保健師や、夜勤ありの病院保健師と比べれば収入は抑えられますが、待遇は安定し残業も少なく、長く続けやすいでしょう。
しかし長く勤める方が多いということは、求人がなかなか出ないということです。
希少で人気が高い保健師への転職を目指すときには、看護師専門の転職サイトをうまく利用することをお勧めします。
- 病院や介護施設で看護業務を兼ねる場合、シフト制や夜勤、残業がある
- 産業保健師の勤務時間は日勤が多いものの、企業の操業体制によって違う
- 大企業の産業保健師は、残業時間が増える傾向がある
- 保健師の仕事の中で最も残業の可能性が低いのは学校保健師
- 給与を重視するなら大企業の産業保健師が狙い目
- 行政保健師、学校保健師は産休、育休制度が充実し、長く続けやすい