産業保健師は「日勤のみ」「週末休み」など、決まった時間に働ける保健師の仕事として、人気があります。
従業員の過剰な残業時間やメンタルヘルスが社会問題として取り上げられることが増え、より重要視される仕事でもあります。
産業保健師の働き方や仕事内容は、勤務する企業の規模によって大きく変わってきます。
大手企業と中小企業、それぞれで働く場合の違いやメリット・デメリットをまとめ、大手企業への転職活動のポイントについて紹介します。
目次(もくじ)
産業保健師の就職、大手企業と中小企業はどう違う?
まずは、大手企業と中小企業での産業保健師の働き方の違いについて見ていきましょう。
さらに、保健師としてそれぞれの企業に勤務する際のメリット・デメリットを説明します。
大手企業と中小企業の働き方の違いは?
大手企業では、自前の健保組合を持ち、企業内診療所を設けています。その場合保健師は、医師や看護師とともに診療所に勤務することになります。
一方中小企業では、社内に設けられた医務室で仕事をします。医師は常駐せず、保健師が一人という場合がほとんどです。
大手企業で働くメリット・デメリットは?
大手企業で働くメリットとして、給与の高さや充実した福利厚生が挙げられます。
産業保健師全体の給与平均額は月収約35万円、年収500~600万円ですが、企業規模が大きいほど、そして勤続年数が増えるほど給与は高くなります。
キャリアを重ねた50代の産業保健師では、年収1,000万円以上という方もいます。
大企業ほど、福利厚生や各種手当面で好待遇を期待できます。
研修や学会への参加費用が負担されるなど、一般社員同様にスキルアップのサポートを受けられるところもあります。
一方、デメリットとして、業務量や残業時間が多くなる可能性が挙げられます。
保健師一人で1,000人以上の従業員を担当するところもあり、業務量が膨大になって、残業時間が多くなってしまうケースが見られます。
その他、共に働く人数が多いため、人間関係のストレスが考えられます。
医療従事者でない人事部などの上司と意見が合わなかったり、医師や看護師、他の保健師らとの間でトラブルが生じるデメリットがあります。
中小企業で働くメリット・デメリットは?
中小企業であっても、産業保健師を募集するような規模であれば、100人以上の従業員を抱える会社であることも珍しくありません。
とはいえ、大手企業に比べれば、保健師一人の対応人数は少なく、業務量はそれだけ抑えられます。
そのため、一人一人の社員にしっかり向き合って、仕事をすることができるのがメリットです。
ほとんどの場合は1人で、多くても2人で仕事をするため、人間関係のストレスが無く、自分のペースで仕事を進めることが可能です。
デメリットとしては、給与面で経営状況の影響を受けやすい点が挙げられます。
経営状況が社員の給料に大きく影響し、ボーナスカットや減給などの可能性があります。
また、一人で業務をこなすために責任が重く、孤独を感じたり、経験の少ない保健師にとっては不安が大きいかもしれません。
産業保健師の半数以上が、トヨタやホンダといった自動車メーカー、パナソニックなどの電機メーカーなど、大手製造業に勤めています。
中小企業からの求人もないわけではありませんが、産業保健師では大手企業への就職が多いということを念頭においてください。
<関連記事>:産業保健師への転職、注意点は?
保健師が大手企業で働くために知っておきたいことは?
大手企業の産業保健師として働く場合、どんな点に注意しておく必要があるのでしょうか。
求められるスキルや転職に有利な資格、向いている資質について見てみましょう。
産業保健師として必須のスキルは?
産業保健師と産業看護師の総称である「産業看護職」のうち、約67%が産業保健師で、産業看護師は32%です。
保健師資格で活動する方が多く、「産業保健師」としての募集の場合には保健師資格が必須です。
従業員の怪我や体調不良の対応では、臨床経験が活かされます。そのため採用でも、産業保健師の実務経験や、医療現場での臨床経験が重視されます。
ただし、臨床よりも事務などの実務経験を重視する企業もあり、事前にどのようなスキルが求められているのか、確認しておいたほうが良いでしょう。
また産業保健師は、新入社員からベテラン社員まで、幅広い年代の社員の応対をします。他部署との連携も欠かせず、コミュニケーション能力の高さが求められます。
大手企業への転職、どんな資格や経験があると有利?
労働安全衛生法により、一定規模以上の事業場では、衛生管理官の設置が義務付けられています。
衛生管理官は、労働環境の衛生的改善や疾病の予防処置を担当する職種です。
そのため産業保健師になる上で、衛生管理者の資格を持っていると、採用の際のアピールポイントになります。
<出典>:衛生管理者 /安全衛生技術試験協会
また特定保健指導やストレスチェックの義務化に伴って、産業カウンセラーの資格があると有利になると考えられます。
データの管理などの業務上、ある程度のパソコンスキルも必要です。
さらに大手企業や外資系企業では、外国人の従業員が多く、英語力もアピールポイントになります。
その他、社会人として最低限のマナーを身につけているかどうかも重視されます。
どんな人が向いている?
たくさんの従業員に対応したり、相談に訪れる方の話にしっかり耳を傾ける仕事であるため、「人が好きな方」に向いています。
また業務内容から、事務作業が苦手でない方が良いでしょう。
産業保健師として大手企業へ転職するには?
大手企業の産業保健師として転職するには、どんな活動をすればよいのでしょうか。欠かせない2つの方法について説明します。
複数の転職サイトに登録する
産業保健師を置く企業数も、一企業での保健師採用数も、決して多くありません。
もともとの求人数が少ないうえに、前任者の退職や事業拡大などのタイミングでないと求人が出ないため、採用は不定期です。
希少で、いつ出るかわからない求人を逃さずにキャッチするには、看護師専門の転職サイトへ登録しておくことが大切です。
産業保健師の求人は、ハローワークなどの公開された場に掲載されることがほとんどなく、非公開求人として、専門の転職サイトへの掲載が多くなります。
情報を逃さないように2~3のサイトに登録し、少なくとも月に2~3回はチェックしてください。
先述のように、企業によって保健師に期待する役割が違ってきます。
自分の経験や希望が求人とマッチしているかどうか、転職サイトのコンサルタントを通じて確認できると、なお良いですね。
<関連記事>:保健師の就職率・求人状況は?
大手企業のホームページを確認する
大手企業のホームページに、産業保健師の求人情報が掲載されることがあるので、定期的にチェックしておきましょう。
正社員ではなく、契約社員としての採用も見られます。
契約社員として認められれば、正社員への登用の可能性がありますし、産業保健師としての実務経験になるので、転職時の視野に入れておくと良いかもしれません。
産業保健師としてのやりがいを持ち、希望する企業へ勤務できるように、ポイントを押さえた活動をしていきましょう。
- 大手企業では企業内診療所に、中小企業では医務室に勤務
- 大手企業は給与待遇がいいが、仕事量が多過ぎることがある
- 中小企業は自分のペースで仕事ができるが、給与面が不安定
- 保健師資格は必須で、臨床経験や実務経験が求められる
- 衛生管理者や産業カウンセラーの資格、英語力があるといい
- 看護師専門の転職サイトや企業ホームページの求人情報をチェックする